2015年10月8日木曜日

観世会荒磯能~《班女》

2015年10月8日(木)  13時~16時半    梅若能楽学院会館

解説 「荒磯~能を楽しむために」  金子聡哉

仕舞 《放下僧・小歌》  武田祥照
   《鞍馬天狗》    小早川泰輝
     地謡 高梨万里 野村昌司 北浪貴裕 坂井音雅 

能 《班女》 シテ 武田宗典 
     ワキ 福王和幸 アイ 三宅近成
     囃子 藤田貴寛 鳥山直也 柿原弘和
     後見 観世清和 坂口貴信
     地謡 角寛次郎 浅見重好 松木千俊 岡庭祥大
        坂井音隆 新江和人 佐川勝貴 上田彰敏 
      
狂言 《狐塚》 太郎冠者 三宅右矩 
             主人 高澤祐介 次郎冠者 三宅近成
 
     (休憩20分)

能 《安達原》 シテ 角幸二郎 
       ワキ 野口能弘 アイ 前田晃一→三宅右矩
       囃子 成田寛人 田邊恭資 亀井洋佑 梶谷英樹
          後見 武田宗和 坂井音晴
     地謡 岡久広 小早川修 藤波重孝 武田友志
        清水義也 武田文志 金子聡哉 関根祥丸  
        

 

東中野になってから初めて行く(なおかつ今年最後の)荒磯能。
ここの能楽堂は入口周辺に駐車場があるので、能楽師さんとしばしば遭遇する。
この日も開場直前に出演者の方々がゾロソロと楽屋入り。
私服だと誰が誰だかよくわからない(笑)。
座席数も少なくなったので、補助席を含め、ほぼ満員の盛況でした。

解説と仕舞2番(祥照さん痩せて精悍になったような)が終わっていよいよお能。


能《班女》
おそらく観客の誰もが思ったと思うけれど、シテ、ワキ、アイ、後見も含めてイケメン率の高い舞台。
実力も相応にある人たちばかりだから、お能が初めてという女性の友人を誘うにはこういう舞台が素直に楽しめていいかもしれない。
いや、ヴィジュアルだけでなく内容も凄くよかったのです。

前場の見せ場は、仕事もしないで形見の扇を眺めながら少将の帰りを待っている花子を宿の長(アイ)が追い出す場面なのですが、三宅近成さんがヒステリックなオネエ系キャラを発揮していて面白い!


いっぽう、宗典さん扮する花子は想像通り、手足のすらりとした美女。
(唐織は扇に秋草花をあしらった若草色とサーモンピンクの段替。面は若女ではなく小面かな?)
宿の長の怒りにも一向に動じる気配はなく、どんな境遇に陥っても愛を貫く覚悟でいるのが伝わってくる。
可憐で淑やかに見えても、芯の強い本物の大和撫子。
後姿や物腰、佇まいなど、どれをとっても男っぽさは微塵もない、奥ゆかしい女性に見える。

宗典さん自身、細身に見えるけれど、体軸がしっかりしているから型やカマエが安定していて美しい。
身体が細長いと重心の取り方が難しく、不安定になりがちなのに、太くない、しなやかで強靭な筋肉を鍛えていらっしゃるのだろう。


ところで、貴公子である少将と遊女が恋人同士(夫婦?)という設定はあまりにも身分が違いすぎて不思議に思っていたのだけれど、鈴木啓吾著『能のうた』(新典社)によると、遊女や白拍子などの女性職能集団は内廷宮司の管轄下にあって、天皇・上皇・高位の貴族などにも仕えて寵愛を受けていたため、彼女たちの身分は低いものではなく、遊女になるには美貌はもとより高い教養と技芸力が必要だったという。
なるほど、静御前と義経のような関係と考えるといいのかもしれない。


後場はカケリや居グセ、中之舞など見どころが多いのですが、何と言っても感動的なのは、花子と少将が扇を見せ合う再会のシーン。
黄金時代のハリウッド映画のラストシーンのような甘美な場面を、絵のように美しいシテとワキが美しい所作で演じるのだから、見ている側もドキドキときめいて、否が応でも盛り上がる。
今まで見た中で最高にロマンティックな舞台でした。


観世会荒磯能~《安達原》につづく

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