能 百萬
シテ 百萬 松木千俊 子方 武田章志 ワキ 村瀬提 アイ 山本則孝
笛 松田弘之 小鼓 観世新九郎 大鼓 亀井洋佑 太鼓 小寺真佐人
後見 佐川勝貴 武田友志
地頭 武田志房
地謡 武田宗典 武田祥照 武田崇史 松木崇俊
武田文志 下平克宏 大松洋一
初めて行った深大寺薪能。
やはりお寺での薪能は風情があるし、風薫る季節、外にいるのが気持ちいい。
僧侶の方々がお経を唱えながら、本尊の御燈明から聖火を移し、舞台の左右に設けられた薪に点灯。
でも、そんな障害にもめげず、地謡がすごくよかった!
私が好きな観世流独特の、節回しにうねりを利かせた謡。
私が好きな観世流独特の、節回しにうねりを利かせた謡。
地謡前列にいる武田祥照さんは舞も巧いけれど、謡が抜群に上手い(この方が加わると、地謡のクオリティが格段にアップする。私が知っている能楽師さんってごくごく限られているけれど、二十代でこれだけ謡のうまい人ってなかなかいないように思う)。
子探し狂女物で太鼓が入っているのも珍しいし、
太鼓の出番も前半のみで後半はほとんどないのもユニーク。
面は白曲見。
この面は一見すると妖しげな雰囲気だけれど、シテの松木千俊師の面の扱いがとても巧みで、クモラス(下を向く)とそこはかとなく気品のある悲しげな様子になり、テラス(やや上を向く)と呆けたような狂女の危うさ、不安定な精神状態が醸し出され、場面に応じて表情が豊かに変化していた。
薪の煙も喉や目を直撃していただろうし、かなり大変だったのではないかな。
《百萬》は車之段、笹之段、曲舞……と芸尽くしの曲だけど、私の席からは、横に伸びた青楓の枝とシテ柱が邪魔で、シテの姿が肝心なところで見えなくなってちょっと残念。
でも、そういう野趣あふれる所が野外能の醍醐味でもある。青楓は初夏の彩り、ということにしておこう。
本堂横の様子。 青楓に紅葉も混じっていてちょっと不思議。
季節を勘違いして紅葉したのか、それとも春に紅葉する種類の樹木なのか。