2018年12月1日土曜日

松月会・能と囃子~大倉流小鼓の会

2018年11月23日(金) 大槻能楽堂
(拝見したもののみ記載)
舞囃子《小袖曽我》上田顕崇&上田宜照
    斉藤敦 社中の方 辻雅之

   《放下増》斉藤信輔
    貞光智宣 社中の方 上野義雄

   《自然居士》赤松禎友
    斉藤敦 社中の方 河村大

   《松虫》斉藤信隆
    貞光智宣 社中の方 上野義雄

   《高砂》 大槻裕一
    斉藤敦 社中の方 河村大 中田一葉

   《屋島》 寺澤幸裕
    貞光智宣 社中の方 辻芳昭

能《井筒・物着》シテ 梅若万三郎 
    ワキ 福王茂十郎
    赤井啓三 社中の方 河村大
    後見 加藤眞悟 上田貴弘
    地頭 大槻文蔵

舞囃子《安宅・延年之舞》上田貴弘
    野口亮 社中の方 山本哲也

   《葛城・大和舞》大槻文蔵
    赤井啓三 社中の方 辻芳昭 上田悟

   《弱法師・盲目之舞》久田勘鷗→上田拓司
    赤井啓三 社中の方 山本哲也

番囃子《正尊・起請文》シテ正尊 大槻文蔵
    義経 寺澤幸裕 姉和 大槻裕一 静 寺澤杏海
    弁慶 福王茂十郎
    野口亮 社中の方 辻芳昭 上田悟

舞囃子《善知鳥・翔入》長山禮三郎→観世喜正
    赤井啓三 社中の方 山本哲也

   《養老・五段》大西礼久
    野口亮 社中の方 辻芳昭 上田悟

半能《融・舞返》シテ観世喜正
   ワキ 江崎正左衛門
   野口亮 社中の方 山本哲也 中田弘美

ほかにも能《岩船》や一調、独鼓など盛りだくさん。




阪神の能楽師さんについてはほとんど存じ上げなかったから、こうした会は願ってもない機会。
まさに芸のテイスティング! 
社中の方々も音色のみならず掛け声もうまい方が多く、とくに一調・能・番囃子をされた方々は見事でした。


以下は単なる個人的メモ。

舞囃子《小袖曽我》上田顕崇&上田宜照
リアルご兄弟なので息が合っている。
上田宜照さんは型がきれい。
お二人とも若い女性ファンが多そう。


舞囃子《自然居士》赤松禎友
文蔵師の腹心、片腕のような方だけあって、芸風も文蔵師に似て折り目正しい。
いつもシリアスなお顔をされているが、プライベートでもそうなのだろうか。


舞囃子《松虫》斉藤信隆
豊かでたっぷりした、円熟期の舞。
こういうベテラン世代のうまい方って、関西ではなかなかいらっしゃらないので、貴重な存在だ。
機会があれば、お舞台を拝見したい。


舞囃子《高砂》 大槻裕一
若竹のように勢いのある清々しい高砂。
これから何度もこの方の高砂を拝見する機会があるだろうから、どう変化していくかが楽しみ。


舞囃子《屋島》寺澤幸裕
キリリッと引き締まったカッコいい《屋島》。
心惹かれる舞囃子だった。
来年あたり、この方の舞台も観てみたい。



能《井筒・物着》シテ 梅若万三郎 
万三郎氏の舞台については別記事に記載します。



舞囃子《葛城・大和舞》大槻文蔵
文蔵師については、舞はもちろんきれいだし、もしも好きになれたら関西での観能の幅が広がるだろうと思い、これまでも何度かチャレンジしてきた。
しかし、どうしてもこの方の謡が自分には合わなくて、謡に阻まれていた。

(あと、舞があまりにも完璧で非の打ちどころがないため、心に何も刺さらずに、心地よくサラサラと流れていくのが、いまひとつ入り込めない理由の一つだった。)

それがこの日、なんとなくだけれど、はじめてこの方の芸の魅力にほんの少し開眼したような気がした。

大和舞にはこれまでになくのめり込めたし、最後に正先で幣を振るところでは心底ゾクッとした。

阪神には良い囃子方さんが多い。
赤井啓三さんの笛も好きだし、上田悟さんの太鼓もよかった。



番囃子《正尊・起請文》シテ正尊 大槻文蔵
この《正尊》の番囃子、素晴らしかった!
正尊と弁慶との掛け合い。起請文。
文蔵師のだみ声に近い声質の渋い味わい。
自分には合わないと思っていた文蔵師の謡の、黒楽茶碗のような深みのある鈍い光り。

文蔵師の声質や謡には、鬘物などよりも、こういう曲のほうが合っているのかもしれない。
悟りを得たように泰然とした文蔵師の物腰にも見入ってしまった。

やはり食わず嫌いではいけないですね。
徐々に観る機会を増やしていかなくては。


社中の方は小鼓の音色だけでなく、構えがとても美しい方だった。
野口亮さんの笛も好み。



半能《融・舞返》シテ観世喜正
喜正さんのシテを拝見するのはどれくらいぶりだろう。
《杜若・恋之舞》を観て以来かもしれない。

《融・舞返》にぴったりのキレのあるスピーディな舞で、中堅真っただ中の、現在の喜正さんの技と芸の魅力を存分に楽しむことができた。

融の亡霊が、黒垂をつけているのもよかった。

初冠に中将の面には、ぜったいに黒垂が似合う!!と思う。
黒垂なしの初冠の出立の時もあるけれど、あれはどうしようもなく間の抜けた感じになって、せっかく良い舞台でも、興ざめしてしまうもの。

ほかのシテ方さんたちも、お願いします。
貴公子の出立のときは、どうか、黒垂をつけてください。


社中の方も、あの早舞と舞返の超早送り的スピードで打つ小鼓が、超絶にカッコよく、プロの囃子方さんも最高で、この舞台は地謡も、お囃子も、シテも見事だった。


このあとも、盛りだくさんな内容が続き、最後の寺澤拓海さんの能《岩船》もとても観たかったのですが、《融》で退席しました。
(半能《融》の終了時点で7時くらい。松月会は9時近くまで続いたそうです。)


梅若万三郎の能《井筒・物着》につづく








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