金剛流の五段神楽からのつづき
能《巻絹》シテ巫女 豊嶋三千春
ツレ都の男 豊嶋幸洋ワキ臣下 野口能弘 アイ従者 三宅右矩
一噌隆之 幸正昭 谷口正壽 観世元伯→徳田宗久
後見 松野恭憲 豊嶋晃嗣
地謡 宇高通成 金剛龍謹 宇高竜成 坂本立津朗
元吉正巳 田中敏文 宇高徳成 遠藤勝實
前置きが長くなりましたが、ようやく舞台の感想です。
【ワキ大臣・アイ従者の登場】
名乗り笛で、ワキの大臣とアイの太刀持が登場。
両者のハコビがきれい。
とくに能弘さんのハコビには品があり、位の高い大臣の風格を感じさせる。
ワキの出立は、渋いグリーンの長絹に朱色の露、白大口に烏帽子。
アイの肩衣は、白波に大胆な槌車の文様。
急成長中のこのお二人が今回の舞台でも良い味を出していた。
【ツレ(都の男)の登場】
次第の囃子でツレの都の男の登場。
谷口正壽さんと幸正昭さんの大小鼓の組み合わせは初めて体験するけれど、たぶん同年代で実力も拮抗した、音色・掛け声・呼吸ともに良いコンビ。
たまにはこういう珍しい組み合わせて聴くのも楽しい。
ツレの豊嶋幸洋さんも初めて拝見する。
安定した下半身ですっと立つ姿のきれいな、堅実な芸風だ。
ツレの装束は落ち着いた緑地の水衣に白大口。
色の取り合わせがワキの装束とかぶっている。
以前、殿田さんが、ワキはシテ方と装束の色がかぶらないように配慮する(装束を数パターン用意していく)とおっしゃっていたが、そのへんはどうなのだろう?
三熊野に着いた男は、音無神社に参詣する。
(ちなみに音無神社は熊野本宮の末社で、祭神は少彦名命だったが、現在は社殿はないそうだ。)
神社の境内で冬梅の香りに気づいたツレは、香りの源を探るように脇正に向き、「や! げにこれなる梅にて候」と、梅の木を発見し、正先で「南無天満天神」と、下居合掌、心の中で歌を詠む。
この梅の香りを聞いた時の嗅覚による発見と、
梅花そのものを見つけた時の視覚による発見の違いの表現、
そして、音無天神に歌を捧げる時の敬虔な所作が印象的だった。
(観世では「や、冬梅のにほひの聞え候」と、嗅覚による最初の発見にポイントが置かれるが、金剛流では梅花を見つけたところで「や!」という感嘆詞がつくところが面白い。)
道草を食ったために遅れた男は、大臣の怒りを買い、従者によって縛られる。
この時のワキの怒りっぷりが実に好く、アイの右矩さんも「ふてえ野郎だ!」みたいなプリプリした表情。
男が縛られる時の、「その身の科はのがれじと」の地謡もドラマティックに盛り上げて、劇的な場面だった。
先日の、阿佐ヶ谷神明宮奉納能の時も思ったけれど、金剛流の地謡って好いなー。
《巻絹》後半につづく
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