2015年9月20日日曜日

柿原繁蔵十三回忌追善囃子会

2015年9月20日(日) 10~19時  国立能楽堂

番外連調《海士キリ》 柿原崇志 柿原弘和 柿原光博 柿原孝則
             松田弘之 大倉源次郎 桜井均

番外一調《江口》    梅若玄祥 白坂信行

番外能《猩々乱》シテ武田尚浩 ワキ殿田謙吉
         一噌隆之 曽和正博 柿原孝則(披キ)観世元伯
         後見 野村四郎 藤波重彦
         地謡 浅見重好 小早川修 馬野正基
            長山桂三 坂井音隆 武田祥照

舞囃子出演シテ方・狂言方(出演順)
 観世喜正、坂真太郎、山本泰太郎、広島栄理子、佐藤双早子、桑田貴志
 坂井音雅、佐久間二郎、遠藤喜久、小倉健太郎、藤波重彦、角当直隆
 佐野登、横井徹、野村四郎、山崎正道、馬野正基、長山桂三、坂井音隆
 浅見重好、武田祥照、坂井音晴



柿原ファミリー総出演のお祭りのような囃子方社中会。
思い出の写真入りの豪華な番組に記された「御挨拶」によると、
柿原繁蔵師は崇志師の父(弘和師・光博師の祖父)で、
趣味で能楽を始めて、五人の子を育てながら安福春雄師に師事、
やがて職分となり、高安流大鼓方として福岡で活動したとのこと。

つまり、能楽界での4代にわたる柿原家の繁栄の礎を築いた方らしい。

柿原家は、古くから代々続く大鼓方の家系だと思っていたので意外だった。
それから、同じく高安流大鼓方の白坂信行・保行師は弘和師の従兄弟だそうです。
これも知らなかった。
柿原家囃子方の人々が九州男児の血を引いているというのも分かる気がする。

ロビーには花々で飾られた、大鼓を打つ繁蔵師のお写真が。
手を合わせてから隣のテーブルを見ると、
崇志師が日本芸術院恩賜賞を受賞した際のご家族のアルバムも公開されていて、
追善会だけれど、御先祖孝行の心のこもったおめでたい会なのが伝わってくる。


《三番三》 山本泰太郎
舞囃子の前半の見どころは、なんといっても三番三。
山本泰太郎さんが汗びっしょりの熱演で、
たぶん汗が目の中に入って痛いだろうけど、泰太郎さんは瞬きひとつせず、
全身全霊で、神への祈りを込めるように勤めていらっしゃった。
高いカラス飛びに、集団をエクスタシーに導く昂揚感のある鈴の段のラスト。

社中の方の披きでしたが、揉み出しがかっこいい!
わたしもエア大鼓で揉み出しにチャレンジしたことがあるけれど、
情けないことにすぐに筋肉痛になってしまう。 
(とはいえ、エア大鼓でもストレス解消になって気分スッキリ。)



以下は、印象に残った舞囃子のメモ。(柿原ファミリーの番外連調には間に合わず)

《班女》 桑田貴志    深みのある謡。

《蝉丸》 坂井音雅    表現力豊かで情景が目に浮かぶよう。
音雅師のお能は去年《玉鬘》を拝見したきりだけれど、芸をさらに深化させたように思った。要チェックのシテ方さんだ。
      

《龍田》 遠藤喜久  とにかくきれい。以前に拝見した時よりも心惹かれるものがあった。

《船弁慶・前》 小倉健太郎  だいぶ痩せて体型がすっきり。
      先月の薪能で地謡を休演されていたけれど、そのことと関係があるのだろうか。

《砧・後》 藤波重彦  地謡 梅若玄祥、山崎正道、馬野正基
    シテももちろん良かったのですが、やっぱり凄い、地謡のこのメンバー!
    まさしくお能を見ているみたいに心をガンガン揺さぶってくる。
    非常に濃厚で充実した舞囃子だった。


《野守》  馬野正基
      飛び返り3回くらいされたんじゃないかな。
      しかも、高さと飛距離のあるクオリティの高い飛び返り。
                今度はお能で見てみたい。


《巻絹》  長山桂三
    長山桂三さんは何度か拝見してるし上手い人とは思っていたけれど、
    今までは比較的ニュートラルな感想しか抱いていなかった。
    でも、この日はなんというか、それまで強烈な睡魔に襲われていたのに
    それが一気に吹き飛んで、目が舞台に釘付けに。
          間の取り方や緩急の付け方、重心の置き方などがどことなく関西風で
    わたしの好み(神楽などでは関西的な部分が出やすいのかも)。
    舞うごとに空気が清浄になっていくような、厳かで魅力的な舞だった。
    
 


《野宮・合掌留》 浅見重好
     不覚にも休憩を取ってしまって途中から拝見。
     素晴らしかった。この方、女面をかけるとすごい美人になりそう。
     お能で浅見師の《野宮》を観てみたい。


《春栄》 武田祥照
 前にも書いたかもしれないけれど、武田祥照さんは関根祥丸さんとともに
 観世流二十代部門で大注目しているシテ方さん(どちらも非凡)。
 舞もきれいだし、そして何よりも謡がとびっきりうまい!
 九郎右衛門さんや味方玄さんの目にも早速とまって、
 すでに舞台を何度か御一緒されている。
 今度は九郎右衛門さんのツレで《松風》か《蝉丸》をやってほしい、もちろん東京で!


番外能《猩々乱》
  柿原孝則さんの披き。 おめでとうございます!
  (後見に控える弘和パパは歳の離れたお兄さんのように見えるけど、
   美しく端座する姿からは威厳のオーラ。とっても貫禄があった。)

  孝則さんの大鼓ははつらつとしていて、披きにふさわしいフレッシュ感。
  そして何よりも彼の凄い点は小鼓や太鼓と合わせるべき時に音のずれがなく、
  決めるべきポイントは必ずきっちり決めるところ。
  他の囃子の呼吸と合わせたり、
  地謡やシテの息使い、舞台の気の流れをつかんだりするのは
  通常ならば並大抵のことではないのだろうけれど、
  さすがは鼓の家で生まれ育った人、本能的にそれが分かるのかもしれない。
  (たぶん、天性の才能もあるのだろう。)

 追善と新しい門出、良いお社中会でした。






  

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