2019年1月8日火曜日

金剛流謡初式 2019

2019年1月3日 12時~13時 金剛能楽堂
 ロビーに飾られた新年のお祝いの花々。

素謡《神歌》金剛永謹 金剛龍謹
   地謡 流儀一同

仕舞《淡路》  宇髙竜成
  《田村クセ》豊嶋幸洋
  《草紙洗》 今井清隆
  《鞍馬天狗》廣田幸稔
   地謡 豊嶋晃嗣 宇髙徳成 重本昌也 惣明貞助
  《難波》  種田道一
  《羽衣クセ》宇髙通成
  《春栄》  豊嶋晃嗣
  《猩々》  今井克紀
   地謡 宇髙竜成 宇髙徳成 山田伊純 向井弘記

舞囃子《高砂》 金剛龍謹
   杉市和 曽和鼓堂 石井保彦 前川光範
   地謡 今井克紀 宇髙徳成 山田伊純
      惣明貞助 向井弘記

三が日三日目、こちらの謡初式も満席。
能舞台のお正月飾りも、流儀や家々によって異なるのがおもしろい。

《神歌》
鏡の間からカチカチと切火で浄める音が聴こえてくる。
照明が極度に落とされるせいか、舞台にも見所にも、ピーンと張りつめた緊張感が漂う。透き通った空気。

平安神宮新年奉納の金剛流の《神楽式》ではシテ謡の箇所が和語になっていたけれど、この日の神歌では、通常の漢語(音読み)に戻っていた。

たとえば、神楽式では「千年(ちとせ)の鶴」だったのが、神歌では「千年(せんねん)の鶴」に、「万代(よろずよ)の池の亀は、甲に三極(みつのきはみ)を備へたり」だったのが、神歌では「万代(ばんだい)の池の亀は、甲に三極(さんきょく)を備へたり」と、通常の読み方になっていた。
金剛流では《神楽式》のシテ謡のみ、読み方を変えているらしい。

また、観世の《翁》では「なぞの翁ども」となっているところが、金春も金剛も「なじょの翁ども」となっている点も興味深い。
たしか、奈良津比古神社の翁舞でも「なじょの翁ども」と謡っていたように記憶する。おそらく本来の翁の詞章は「なじょの翁ども」か、それに類する詞だったのかもしれない。
(上掛りの詞章で「なぞ(謎)の翁ども」になっているのは、意味が通りやすいように「なじょの翁ども」から変更したものかもしれない。)

ではいったい、「なじょの翁ども」の「なじょ」とは、何のことだろう?


仕舞前半四番
タツシゲさんがダントツにすばらしい。この方、年齢的には若手後期に属するけれど、芸の上では流儀の中核を担う「花形役者さん」だと思う。


仕舞後半四番
後半では、豊嶋晃嗣さんがよかった。
地頭はタツシゲさん。舞よし、謡よし。座っている姿勢も腰がきれいに入っていて、心構えが姿にあらわれている。


舞囃子《高砂》
若宗家は美声で、オペラのテノール歌手のようによく通る。
途中で、「八段之舞か?」と思うほど、テンポが緩んだ箇所があったが、笛のせいだろうか。
観世とは、型が要所要所で違うところが面白い。
金剛流も喜多流と同様、「悪魔を祓い」で両ユウケンをしない。「梅花を折って」のところは、扇を開いたままの型。

下掛りと上掛りの型を比較すると、後者はより具象的な表現になっている。とはいえ、型のことはほとんどわからないから、たんなる印象にすぎないのだけれども。


今年もお正月からたくさんお能を拝見できて、楽しかった♪
あこがれの能楽師さんともお話したり、ご挨拶したり。
ありがとうございました。





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