《神楽式》翁 金剛永謹
千歳 島田洋海 三番三 茂山千之丞
左鴻泰弘 林大輝 谷口正壽
種田道一 金剛龍謹 豊嶋晃嗣 惣明貞助
仕舞《高砂》 杉浦豊彦
《田村クセ》 浦部幸裕
《草子洗小町》河村和重
《鞍馬天狗》 大江広祐
地謡 浦田保親 片山伸吾 田茂井廣道 深野貴彦
仕舞《八島》 廣田幸稔
地謡 豊嶋幸洋 今井克紀 山田伊純 重本昌也
小舞《三人夫》 茂山千作 茂山逸平 茂山忠三郎
地謡 茂山あきら 茂山茂 松本薫 山下守之
装束付舞囃子《猩々》シテ 分林道治
ワキ 岡充
森田保美 曽和鼓堂 井林久登 井上敬介
地謡 井上裕久 味方團 橋本忠樹 大江泰正
謡初式のあとは、平安神宮で行われる京都能楽会新年奉納へ。
例年通り、演者も観客も、謡初式との掛け持ちが多く、岡崎公園に立ち並ぶ露店をのぞきながら、ぞろぞろ移動するのもおなじみの風景。
【神楽式】
元旦早々、《翁》を拝見できるなんて! お正月ムード満点。
金春安明著『金春の能』によると、《神楽式》とは、明治初年に金春・金剛の両大夫が相談して、春日社の神事用に簡略化した《翁》の小書のことだという。
とはいえ、同じ《神楽式》でも、金春流と金剛流とでは若干違っている。
(金春流の《神楽式》は現在、春日若宮おん祭のお旅所祭で上演される。)
以下に、金春・金剛の《神楽式》の共通点・相違点をあげると;
共通点
(1)直面で舞う
(2)白浄衣で舞う
(3)小鼓が一丁
(4)三番三の揉ノ段がない
相違点
(1)金春流の《神楽式》では千歳は出ないが、金剛流の《神楽式》では千歳の舞がある。
(2)金剛流ではシテ謡の漢語(音読み)を、和語(訓読み)に換えている。
たとえば、この日わたしが聞き取った箇所でいうと、「千年(ちとせ)の鶴は」「甲に三極(みつのきわみ)を備へたり」「天下泰平(あめがした、やすらかに、たいらかに)」など、訓読みの和語になっていた。
演者の配置は三尊形式のように、中央に翁、右に三番三、左に千歳が並ぶ。
三人とも白い装束を着けているので、まるで神官が舞っているような厳かな雰囲気がある。
ただひとつ気になるのは、観世の「日吉式」と同様、翁が直面という点だ。
《翁》は翁面という御神体をつけることで、はじめて成立する芸能といえる。その《翁》を直面で上演すれば、「神の不在」ということにならないだろうか。
金春流では、《神楽式》を《翁》の小書という扱いではなく、別曲扱いをすると聞く。そうすることで、「神の不在」という矛盾と折り合いをつけているのかもしれない。
茂山童司改メ千之丞さんの鈴ノ段がよかった!
いつもと表情がまるで違うので、最初は誰だか分らなかったほど、真剣・真摯な面持ち。いかにも農耕祭礼らしく、鈴を振りながら祈りを込めて、種をまき、土壌を踏み鳴らし、大地の力を呼び覚ます。
しだいにテンポが速まり、リズミカルな足拍子とともに、こちらの気分も高揚し、不思議な上昇感とともに、舞と囃子はクライマックスへ。
観世流仕舞四番
浦部幸裕さんの舞をはじめて拝見。
大江広祐さんの《鞍馬天狗》はキレがあり、天狗の迫力と敏捷さを感じさせた。
金剛流仕舞《八島》
金剛流も喜多流と同じく、扇を二本使うようだ。
茂山家の小舞《三人夫》
小舞《三人夫》というのは、能でいうと《三笑》的なもの? それとも《弓矢立合》?
昨年も小舞《三人夫》が奉納されたので、きっと毎年恒例なのだろう。
それにしても、茂山逸平さんはお正月、テレビに出ずっぱりだった。
ちょうど同じ時刻に裏番組的に放送された「古典男子」をはじめ、茂山狂言の茂山逸平作新作狂言《かけとり》のシテ、《宗旦狐》《素袍落》の解説、「京都和菓子 千年の旅」と、三が日は毎日のようにペペさんの顔をテレビで観ていたように思う。
超売れっ子。
装束付舞囃子《猩々》
内容的には半能。
分林さん、謡がとてもうまく、地謡もいい!
舞姿も素敵で、目にも美しく、なんともめでたい《猩々》だった。
観客のなかには、初詣のついでにちょっと覗いて、お能を初めて観たという人も多いだろうから、良いPRになったのではないだろうか。
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