2016年7月22日(金)18時半~19時半 22℃ 国立能楽堂大講義室
担当:則久英志 ・ 舘田善博 ・ 野口能弘 ・ 御厨誠吾
(1)《紅葉狩》ワキ一声→ワキツレ一声 実演と解説
(2)みんなで謡おうワキ一声
(3)《紅葉狩》クセの上羽「よしや思へばこれとても」から「気色かな」までの謡の実演
(4)能と下掛宝生流の歴史
詳しくは、下掛宝生流サイトへ
(5)ワキの装束について
(6)能《紅葉狩》の見どころ
ワキ方ウィーク第二弾は、下宝能の会の事前講座。
なかなか聞けないワキ方の貴重なお話、とっても勉強になりました。
お話は則久さんと御厨さんが御上手で、とくに則久さんは全体の進行を俯瞰しながら、脱線しそうになると軌道修正したりと、講座をグッと引き締めていらっしゃいました。
落ち着きがあってさすがです。
実演も豊富に披露してくださって、ワキの登場の型どころのお話など、今までただボーっと観ていただけでしたが、なるほど、そういう意味があるのかと。
「駒の足並勇むらん」のところで、ワキが爪先立ったりする型をするのは、ワキ・平惟茂を乗せた馬が風の音に興奮するさまを表わしているそうです。
道行では、鹿を追って山を登っていくと、酒宴をしているやんごとなき美女たちがいる様子が謡われています。
(御厨さんが、「いわば女子会ですね。でもイマドキの若い男性と違って惟茂は品がいいから、邪魔しないようにそっと立ち去ろうとするのですが、今も昔も女性のほうが積極的で……」みたいな説明をされて、会場爆笑。かくいう私(御厨さん)も昨夜も朝の2時まで飲み過ぎちゃってリアル惟茂状態……というお話になりかかったところで、則久さんがすかさず軌道修正するというなかなかのファインプレーです(笑))
ワキの謡を一緒に謡うというコーナーでは、スクリーンに謡本の文字が映し出されたのですが、わたしは近眼で文字の一部しか読めず、ゴマ点はほんとうにゴマにしか見えなかったので(見えてもゴマ点の意味はわたしにはわからないのでした (・・;))、耳で聴いてそのまま謡うだけだったのですが、用意の良い方は謡本を持参されていました。 スバラシイ!
ワキの謡は強吟だそうです。
ワキは舞台の場面を設定する扇の要のような存在で、そんなワキ方にとって大事なのは謡だと、宝生閑師もおっしゃっていたそうです。
またシテ方とワキ方の謡の違いは、シテは非現実的な存在なので節を細かく繊細に謡うのに対し、ワキは現実の男性という設定なので息を強く、武骨に謡うとのこと。
ワキはとくに強く謡うことが大切だそうです。
(則久さん曰く「腹筋にずっと力を入れて謡うので、腹部のエクササイズにもなりますよ」)
あと、装束の説明で興味深かったのが、衿の色のお話。
《紅葉狩》の平惟茂役では、浅黄色(内側)と朱色(外側)の衿を重ねて着るのですが(シテに遠慮して「白」ではなく「浅黄色」の衿を使うそう)、ワキ方が衿を重ねて着るのはこの《紅葉狩》と《張良》だけだそうです。
いうまでもなく《張良》は一子相伝、《紅葉狩》が師からの直伝だからとのこと。
ワキ方にとって《紅葉狩》がどれだけ重い曲なのかが分かります。
また、着流し僧には樺色(肌色)の衿をつけるそう。
今度の下宝能の会では《紅葉狩》のクセをワキ(欣哉さん)が舞うのですが、この日講座を担当されたワキ方さんのなかではワキがクセを舞うのをご覧になったことのある方は一人もいらっしゃらないそうです。
欣哉さんだけ閑師が舞うのをご覧になったとのこと。
それほど珍しいものなのですね。
ワキがクセを舞う際の見どころは、美女たちばかりに舞わせてはなんだから、俺もひとさし舞ってやろう、という惟茂の男ぶり、粋な感じ。ここをぜひ観ていただきたいとおっしゃっていました。
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