2017年5月22日月曜日

《賀茂・素働》後場~国立能楽堂五月定例公演

2017年5月19日(金) 18時30分~21時  国立能楽堂
前場からのつづき
能《賀茂・素働》シテ里女/別雷神 片山九郎右衛門
   ツレ里女/天女観世淳夫
  ワキ室明神神職 則久英志 舘田善博 野口能弘
    アイ末社の神 石田幸雄
  杉市和 後藤嘉津幸 亀井広忠 小寺真佐人
  後見 観世銕之丞 清水寛二
  地謡 山崎正道 馬野正基 鈴木啓吾 谷本健吾
     川口晃平 内藤幸雄 小田切亮麿 山崎友正




間狂言】
小書「素働」では替合「御田」が演じられることもあるそうだが、この日は末社の神による三段之舞。
狂言らしくポツポツと切れる呂中干系の笛がコミカルで軽快。


後場】
〈後ツレ出端→天女之舞〉
後ツレの御祖神(みおやのかみ)は、朱色の舞衣に黄色がかった大口、天冠。
面は前場と同じ、近江作の小面。
この小面がほんわかして愛らしく、淳夫さんの雰囲気によく似合う。

達拝で始まる天女之舞は、豊穣を感じさせるまろやかな優しい光にあふれ、
細部まで丁寧に、丁寧に舞う後ツレの舞は、観る者を幸せな気分にさせる。
こういう丁寧さ、ひたむきさが、淳夫さんの最大の魅力です。



〈後シテ早笛→イロエ〉
舞い終えた後ツレは「別雷の神体来現し給へり」で、
彼方の雲を見やるように雲ノ扇。

ここから一転、早笛となるが、常の早笛とは違い、ゆっくりした重みのある位。

これがいかにも遠くの空でゴロゴロと雷が鳴り始めたような調子で、
雷雲が空の彼方から稲妻を光らせながらしだいに近づいてくるように、
後シテ・別雷神が登場する!

後シテは狩衣・半切、赤頭から稲妻型にジグザグに切った金紙「光」を垂らし、
手には白い幣をもつ。
面は、怒天神。
金具をはめた眼が鋭く、きりりと引き締まった表情の凛々しい面。

イロエでは、太鼓に合わせて踏むシテの足拍子が、
清涼殿の落雷もかくやと思わせるほどダイナミックな迫力!

上半身は不動のまま、地響きがするほどの足拍子を踏むとは!
自然の威力、神威の表現はさすがだった。



〈終曲〉
「御祖の神は糺の森に飛び去り飛び去り入らせ給へば」で後ツレが退場。
その前に、脇座に控えていた後ツレが立ち上がって橋掛かりに向かう際に、
シテが地謡前で軽く飛び返りをする。
この飛び返りが、九郎右衛門さんには珍しく精彩に欠けていた。
後ツレが正先を過ぎていく途中だったので、空間の安全性が確保できず、
とっさの判断でそうなったのかもしれない。
あるいは膝か腰に故障を抱えているように見えたので、そこが少し心配。

九郎右衛門さんはただでさえ過密スケジュールなのに、五月後半はとりわけ過酷だ。
心身の疲労がたまりにたまっていらっしゃるのかもしれない。

最後は、地謡と囃子の位が急に早まり、シテはタタターッと袖を被いて三の松に至り、留拍子。








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